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筋電メディカル徒然日記

2021年03月19日

徒然日記 10
介護は続くよどこまでも

足利のブドウ園で働いている叔母が育てた子は、私の10歳年下だが、血の繋がりも無く戸籍上も他人だから介護の義務はない。しかし、理由はどうであれ叔母が育てたのは、間違いない。もし、何かあればできる限りしてやりたいものだが、逆老々介護になる。その問題は、無責任にしておくこともできる。が、私と同い年の家人との問題は別である。どの家でも起こる問題が残るけれど、どちらが先に、いや、どちらが介護され、介護する側になるか判らない。
 
そんなわけで、とりあえず介護の話は、先週で終わったと思った。パソコンの電源を切り、シルバーパスを使ってバスを乗り換え家に帰るつもりでオフィスの前のバス停からバスに乗った。新型ウイルスでバスも最近は空いている。ひとり席に座ると、私のスマホに電話がかかってきた。耳が遠くなってきた私は、着信音をかなり大きくしている。周りを気にして慌ててスマホをコートで包んだ。そっと取り出し、「もしもし、今、バスの中なので降りてからかけ直します」と言っても、二重にマスクをしている私の声は相手に届いていないらしい。「えっ、えっ、えっ?」が聞こえるばかりだった。そして、電話はプツリと切れた。気になってスマホの画面を見ると、従姉からである。
 
菊池寛は、戸籍上ふたりの娘と長男がいる。長男は私の父親で、次女は、マルコの母で、長女がいる。今の電話は、その長女の娘からだった。従妹は、私より大分年上である。ともかく、菊池寛の子供たちには、それぞれ子供がひとりきりずつと少ない。また、ひ孫も居ない。しかし、それは戸籍上の問題のようだ。
以前、私は父親からお爺ちゃんの外の子供に5人会ったと聞いた。私が、一桁かい?と父に訊いたら、父は「そんなことあるはずがないよ、ボクは5人会ったんだぞ!3桁まではないだろうがね、2桁は間違いない!」と言っていた。菊池寛は、種馬だった。彼が色紙によく書いた言葉に『無事是名馬』がある。もしや、このことかも知れない。とにかく我が家族の血が途絶えても心配はいらないのだから、助かる。
 
バス停を降りて、すぐに従妹に電話を入れた。苦手な従妹である。なにせ私とマルコは、2歳違いであったが、従姉は6、7歳上だ。子供の頃からいばっていた。威圧感があった。「ゴメン、バスの中だったから」私が言うと「なんだそうか、ホスとかハスとか聞こえたから変だと思って切った!あのね、夏坊に相談があるんだ!私の亭主は、前に脳溢血で倒れたって言ったじゃない。家で寝たきり、病院にだって、リハビリにだって連れて行かなきゃならないでしょ?私だって、80歳をとうに越えてるんだし、それにね、本当は、夏坊に逢って話したかったんだけど、どうも娘にがんがあるらしいの。来週手術をするんだけど!もしもの場合、全員が夏坊の世話にならなきゃならないかも!娘は、あいかわらずひとり暮らしだからね! 頼るは、夏坊くらいしかいないんだもの」。
 
グエっ!また、増えた!今度は、まとめて3人かい!何の因果か知らねども、ひとりの介護が終わるとまたひとり!ドンダケ~ぇ!
“夏坊しかいないんだもの”確かに、そうですよ! しかしね、ボクだって健康平均年齢なんだよ! 介護保険証も持ってるし、コロナ・ワクチンの順番だって医療関係者の次だし!

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹