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筋電メディカル徒然日記

2021年08月20日

徒然日記 32
原稿書けども

私は、この「徒然日記」の他にもう1本ブログの原稿を書いている。各々が週に1回の更新だから、自由に書くにしてもかなり体と脳を使う。それに、締切があるから、毎週オドオドしながら書いている。
私は、作家ではない。もともと文藝の編集者なのだ。だから、退職するまで、目次や連載小説の“今までのあらすじ”のようなモノを書くばかりで長い原稿は書かなかった。よく編集者は、文章を書くのが商売と勘違いされるが、書いても短いものばかりであった。編集長になって最後の頁を書くようになったが、たいした文章量ではない。
 
実は、こんな愚痴めいたことを書いたのは、これらの原稿を書きながら1冊の本を書け!と命じられたからだ。今まで、何社かの編集部から単行本のご依頼はあったが、入稿、原稿をお渡しするまでに1年や1年半の時をもらっていた。でもこれは断れない!入稿は、いつまででしょうか?と訊いてみた。ひと月後と言われた。ギャ!そんな無茶な。それで何を書けばいいのか?とも訊いた。
 
京大の名誉教授森谷敏夫博士の『半自叙伝』よ!博士の新開発した筋電メディカルEMSの機器ができるじゃない?それに伴って、博士が創立した株式会社おせっかい俱楽部から『Dr.森谷敏夫の年をとったらなまけものでいいやん。熟年筋トレならEMS』って熟年者のキンニクをつくる本を出すのもわかってるわね!高齢者の下肢筋肉をらく~にビシバシ鍛える本よ、読んだ?ほら~、あなたみたいに年とっちゃってもう、がんばれないや、なんて思った人に贈る珠玉のメッセージ!道具を使って楽にやったらいいじゃない、っていうあの本よ!お盆前に書き終えてね!
 
そう来なすったか、最近もらいものカステラだの和菓子などくれることが多くなったと思ったら、こんな荒業が待っていたとは!カステラも和菓子も食っちゃった!書かねばならぬか!書かねばならないと決まれば返事が速い!一言「はい!」と答えた。私は、意外と気が小さい、体も弱い!
3年前に同じようなことで「はい!」と返事をした。その何日か後に救急車に乗せられ病院に担ぎこまれた。原因は、30年以上前に取った胆石の痕に綻びが出て、そこに他の腸が入っていた。担ぎ込まれた先は、東京の人なら誰もが知っている病院だった。ストレッチャーから処置室のベッドに移される。大きな病院なのに担当医が意外なことを言った。「今日、僕が居てよかったね!」
執刀医とは一度も面識はない。その病院は、名前が変わる前に一度誰かの見舞いに行っただけ。緊急手術、麻酔で眠らされて翌朝、担当医が私を診にきた。
「大丈夫、昔の傷痕に沿って切ったから線路みたいじゃないよ、1本だ」また変なことを言う。ヤバッ!せっかくEMSを使って腹筋を作り、出っ張った腹を凹ますつもりだったのに!電気刺激だから、しばらくすれば腹筋はつくだろうが、筋肉を縦に切れば、あの4つや6に割れるはずの筋肉が縦だけになってしまうかも!

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹