2022年07月01日
徒然日記 75
女は強し、男は弱し!
以前書いたかも知れないが、歳が歳だからお許し頂きたい!
私の友人の女性が、コロナが始まってしばらくしたころ地下鉄の長いエスカレーターに乗ろうとした。話によると乗る時に足を滑らせたらしい!ともかく長いエスカレーターで、40段はあったと言う。プールにある滑り台と違って、エスカレーターだから段々の構造になっている。そこを背中にして滑り落ちていった。当然、救急車に乗せられ病院に運ばれた。「頭を打たなかったのは幸いでしたねぇ、もし頭を打っていたら死んでいたかも知れない」担当医のドクターは、胸を撫で下ろすように彼女に言ったという。
もちろん背中の検査や何かで、入院したらしいが直ぐに出所、いや、退院した。しばらくの間は、杖をついていたと思う。1週間も経たずに、正常になり、仕事に復帰した。
「仕事を休んでなんかいられないのよ!」彼女は、溌剌として言いのけた。仲間の内で彼女に渾名が付いた。“女ゾンビ”。私と歳が同じである。後期高齢者なのだ。
事故から復帰したころは「もう十分にお金はあるし、このへんで仕事も辞めて終活に入ろうかな」なんて言っていたのだが、杖をつきながら小母さん連中と熱海に泊りがけの徹夜マージャンに行ったり、毎晩銀座に行って好きな酒を浴びるように飲んだりしているうちに、後ろ向きの言葉が出なくなった。先だってなど「200歳まで生きようと思っているけど、それが無理でも120歳は元気で生きて行こうと思うんだ」と嘯いていた。まさしく『ゾンビ』である。
私の友人の男は「そろそろ同窓会でもやっておかないと、ひとり減り、ふたり減り、となっちゃうから幹事団を結成して、皆を集めなきゃな」と言った翌年自分が逝った。「女性は強し、男性は弱し!」の典型である。
そう言えば、私が24歳、作家の故渡辺淳一さんが30代はじめのころ一緒に東北を旅したことがあった。渡辺さんは、私にこんな逸話を話してくれた。
「まだ、ボクが北大の付属の病院にいたころの話だけどね、無医村の診療所に転勤することになったんだ。ある日、車の大事故があって乗っていた4人の若者の内3人が死んだ。1人は掠り傷程度、救急車でボクの所に運ばれて来たんだ。男だった。自分の仲間が3人も死んで、自分が生きているわけがないと思いこんでいる様子なのには困ったよ!赤チン塗って、さぁ帰りなさいと言っても信じない。仕方がないからひと月入院させて、風呂に入れてリラックスさせてやるしか他に方法がなかった。男は、弱いねぇ!
別の日、今度は、ふた山もリアカーに乗せられて診療所に着いた女性がいた。腹がパンパンに膨れあがっていた。どうも何度も堕胎した経験があって、子宮がボロボロになってお腹に血液が溜まってしまったらしい。ボクは、外科医だろ!婦人科じゃない!それで、婦長に訊きながら手術をした。ボクが手探りで子宮を取り出そうと思ったら、婦長から『先生、それは膀胱です』なんて言われてね。とにかく子宮がボロボロで綺麗に縫えない。もう雑巾を縫うように、ね!ところが翌朝回診に行くと、朝食を残さず食べていて、夫に甘えていたよ」
やはり「女は強し、男は弱し!」である。