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筋電メディカル徒然日記

2022年10月14日

徒然日記 90
MRI

「君の腹は、筋肉の塊だね!」
私の妊娠9か月目くらいの大きさ(私は男性です。ですから妊婦になれません)の腹を摘み、叩きながら森谷博士が言った。
「嬉しいですね、ボクはラクダの瘤みたいなものだと思っていました」私が博士に言うと、「実を言うと君のお腹の出方は、変だよね!私は研究者でね、医者じゃないけど見立ては結構当たるんだよ。一度MRIで調べておいたほうが良いと思うよ」
相手は、『京大の筋肉』と呼ばれる森谷敏夫博士、筋肉の権威である。その言葉は重い!
 
私の父の話では、私の祖父もお腹が出ていたらしい!なにせ、お腹の出っ張りのせいで、自分の物が見えなかったと言う説もある!なので、私は隔世遺伝だと思っている。しかし、先生の「私の見立ては結構当たる」が気になる。ハロウィン宝くじも当たらず、凱旋門賞のような競馬も当たらないボクだが、こんな時だけ先生の見立てが当たっては、堪るものか!しかし、ボクの足は主治医の医院に向かっていた。いえいえ、怖くて行ったのではありませんよ!けっして、なんで怖がる理由など無いじゃないですか!あと半年で77歳ですよ、ここまで生きれば儲けものですよ!円楽さんだって72歳でしょ、アントニオ猪木さんだってプロレスラー・アスリートとしてあんなに(よくは知らないが)トレーニングに励んだはずが80歳で逝っちゃうんだから!
 
私の足が主治医の病院に向かったのには、訳があるんです。月に1回貰っている薬が切れたので貰わなきゃいけないでしょ?それじゃないと主治医の先生が心配するし、先生が「患者さんに、薬が切れてるはずだからと電話してみてちょうだいな」と言われた看護師さんも、忙しいのだから、面倒でしょうから、ね!ちゃんと行かなくちゃ!傘がないけど!行かなくちゃ!
それに、もうひとつ区から健康診断の通知が来たので主治医に会って、相談をして検診予約もしなきゃいけません。もし予約をしなければ、主治医も心配し、忙しい看護師さんにも迷惑がかかるから、傘がない!間違った!行かなくちゃ!
 
主治医の診療室で言いつけましたよ!森谷博士のお名前も出して!主治医も有名な森谷博士のお名前を知ってます!博士のお名前を出したとたん、主治医は、シャツを捲くって見せてごらんなさい!と、言うんです。ボクは、醜い腹を突き出して主治医に見せましたよ!主治医も見たくない物を見てしまった顔を一瞬覗かせ、これは、外科ですね、手術ならばMRIを使っても保険が効きますが、痛くも痒くも無く『ただ出っ張っているだけ』では保険診療は出来ませんよ、と言われた。そして、パソコンを見つめ、35年前に胆石摘出の手術を女子医大でしましたね、4年前に手術の跡が破れて救急車で元の厚生年金病院で緊急手術をしたでしょ、救急だから腸にネットを巻かなかったと言っていたじゃないですか?それかも知れませんね、脱腸!外科ならMRIじゃなくてもエコーで十分でしょう!それとも手術します?私は、つい「脱腸か」と呟いた!
 

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹