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筋電メディカル徒然日記

2021年02月19日

徒然日記 06
介護する側される側

さて、ここまで書いてくると読者の皆様は、はは~ぁ!介護の話だなとお気付きになったと思います。森谷敏夫教授の書かれた著書は沢山ありますが、「筋肉」の話でも、プロのアスリートが正しく筋肉を造り、維持していく方法に焦点を当てて書かれた著書と、長寿国日本の介護のために書かれた著書とがあります。
 
私は、皆様と同じ読者ですし、今さらプロのアスリートになるつもりも、年齢でもありません。ただの後期高齢者なのですから。最近よく「私は、絶対に子供たちに老後の面倒をみてもらわないつもりよ」とか「子供や、他人に迷惑をかけるつもりはない!」という声を聞きますが、それは大変身勝手な、不遜な考えだと思います。大なり小なり、長いか短いかは別として、最期にはかならず面倒や世話をかけるのです。そう言いたい気持ちは痛いほど判りますが、結局自分では自分をフォローすることができないようになってしまうのですから、口に出さないほうが良いと思いますし、「いつかは、世話になる日が来るかも知れないけど宜しくね」とか「そんなことにならないように努力するけど、もしもの場合頼んだよ、今のうち礼を言っておくね」のほうが、本当で可愛い。人と人との関係で、それが身内であっても嘘は通りません。しかし、できるだけ「迷惑」や「面倒」をかけずに済む方法を知って、実行すれば良いのです。自分もある程度の知識と努力が必要ですが、70代、80代、そして、それ以上の高齢者で肉体的な努力をすることなどできるはずがありませんね。
 
今度は、介護する側のお話です。親が認知症になったらどうしよう!夜に徘徊でもしたら、自分の仕事に影響が出る。家人にも迷惑をかけたくないし、施設に入れてもスグに出されてしまうんじゃないか。と、多くの心配を抱えている人たちも結構いらっしゃるはずです。面倒をかける側も、面倒をみる側も、森谷教授の「論」を読んでいただければ、何も心配することが無くなるでしょう!「でもね、ボクのオヤジは寝たきりなんだ!」とか、「私の母は、車椅子の生活なのよ!」との反論が聞こえてくるようです!日本人が長生きすることは、良いことなのですが、老々介護になることは仕方がないのです。しかし、楽しく介護をし、楽しく介護をされれば、幸せというものではありませんか。
 
私は、若い時にバンドを組み、仕事のために音楽から遠のきましたが、68歳の時にドラムの先生に付き、いちから学んで7年が経ちます。運動と認知症予防が目的のひとつです。前に書いた私の叔母は、認知症にならない準備だったのでしょうか、私が彼女の急坂の家に見舞いに行く時に、坂の下から電話をすると「クロスワード・パズル買ってきてちょうだい!」と言っていました。たった独りで暮らす叔母は、やはり認知症になるのが恐ろしかったと思います。
この例は趣味の範囲で、誰しもが好むことではありません。久しぶりに会った人の名前を忘れていたり、よく行くショッピング・モールの名前がすぐに出てこなかったりすると、高齢者は認知症扱いをされてしまいます。が、それは若い頃から誰にでもあることです。高齢者だといって「認知症」と決めつけては、ますます委縮してしまうでしょう。75歳以上の自動車免許の書き換えの時にも、介護施設でも、絵を見せて「覚えていますか?」と訊く。ナンセンスです。

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹